国内産の牛肉には、和牛と国産牛があります。どちらも国産の牛肉であるとは知っているけれど
- 「和牛は高くて国産牛は安い」
- 「肉質や味は和牛のほうが上」
ぐらいしか、和牛と国産牛の違いを知らないという人は多いのではないでしょうか。
和牛と国産牛は品種や味に明確な違いがあります。違いを理解した上で牛肉を購入すれば、満足度の高い買い物ができるでしょう。
そこで本記事では精肉店で働くわたしが、和牛と国産牛の違いについて詳しく解説します。
購入する際に気をつけるポイントも解説しているので、ぜひ最後までお読みください。
和牛と国産牛の違いは品種と肥育される期間
和牛と国産牛は品種と肥育される期間に大きな違いがあります。肉質や味にも関係してくるため、明確な違いを確認しておきましょう。
和牛と認められるのは4品種だけ
日本で和牛と呼ばれるのは、国によって認められた以下の4品種だけです。
- 黒毛和種
- 日本短角種
- 無角和種
- 褐毛和種
4品種の中で交配した牛も、和牛と呼ばれます。たとえば、黒毛和種と日本短角種を交配した牛も、和牛という扱いです。
脂の甘みと柔らかい肉質が魅力の黒毛和種や、赤身の旨味が絶品の褐毛和種など、和牛の中でもそれぞれ特徴があります。自分の好みに合わせて、食べる品種を選べるところも和牛の魅力です。
和牛は「4品種と4品種の中で交配した牛」しか認められないと、覚えておきましょう。
国産牛とは日本国内で肥育期間が最も長い牛
品種や生まれた土地に関係なく、国内で飼育されている期間が最も長い牛が国産牛と呼ばれます。
海外で生まれた牛であっても、日本で肥育した期間が長ければ、国産牛です。たとえばアメリカで8ヶ月育った後に、日本で10ヶ月肥育して出荷する牛は、国産牛という扱いになります。
また和牛と国産牛を交配して生まれた「交雑種」も国産牛と呼ばれます。和牛の血が入っているため、通常の国産牛より、肉質や味が良いのが特徴です。
国産牛は「国内で肥育された期間が長い牛」であると、覚えておきましょう。
和牛の品種と特徴
ここでは以下の4品種の和牛を解説します。
- 黒毛和種
- 日本短角種
- 無角和種
- 褐毛和種
和牛の品種によって、育て方や味に違いがあります。それぞれの特徴を確認して、好みに合う品種を選びましょう。
黒毛和種は和牛の9割を占める
黒毛和種は、和牛の代名詞ともいえる品種です。日本全国で飼育されている銘柄和牛の約90%を黒毛和種が占めています。
小柄で力強く人懐っこいため、農耕役牛として重宝されていた黒毛和種。朝鮮半島から見島などの離島を経由して、西日本に広がったといわれています。
黒毛和種の代表銘柄牛は以下のとおりです。
- 神戸牛
- 松阪牛
- 米沢牛
きめ細かい美しいサシが入り、柔らかい肉質が特徴です。見た目、味ともに最高級の和牛といえます。
黒毛和種については、以下の記事で詳しく解説しています。
→【精肉歴8年の人が教える】黒毛和牛の特徴とおすすめなブランド和牛を徹底解説!
日本短角種は寒い地域で肥育されている和牛
日本短角種は、東北でしか肥育されていない和牛です。「夏山冬里方式」という、夏は山で牧草を与え、冬は里で育てる肥育方法を採用しています。
広い放牧地でのびのびと運動させ、草を中心に与えることで、脂が蓄積しない上質な赤身を生み出しています。
短角種はサシが多く入っている黒毛和種よりも、脂が少ないのが特徴。旨みのもととなるアミノ酸を多く含む赤身の牛肉です。
日本短角種の代表銘柄牛は、以下のとおり。
- いわて短角牛
- あおもり十和田牛
- かづの牛
近年では健康志向や安全・安心を求める消費者の強いニーズにより赤身肉が注目され、日本短角種への関心が高まっています。
日本短角種については、以下の記事で詳しく解説しています。
→【和牛の中で1番若い】日本短角種の特徴と歴史!代表的なブランド和牛も紹介
無角和種は山口県で肥育されている和牛
無角和種は和牛4品種のうち最も希少な品種で、山口県の阿武郡一帯のみで飼育されています。
農耕用に肥育されていた在来黒牛と、アバディーンアンガス種というイギリスの品種とが交配して誕生した和牛です。黒毛和種と同様の黒い姿をしていますが、角がなく、ずんぐりとした体格をしています。
サシが入りにくく、水分の多い赤身が特徴。
噛み心地が良く、旨味の成分であるアミノ酸が豊富で、赤身のコクが口の中に広がります。
無角和種については、以下の記事で詳しく解説しています。
→【飼育頭数わずか200頭】4品種の中で最も希少な無角和種について徹底解説!
褐毛和種は赤身が多くヘルシーな肉質が特徴
褐毛和種は、体毛が黄褐色あるいは赤褐色をした角のある和牛です。熊本系と高知系の2つの系統に分かれていて、褐毛和種熊本系、褐毛和種高知系と区別されます。
飼育されている地域は、以下のとおりです。
- 熊本県
- 高知県
- 宮城県
- 秋田県
- 北海道
全国で肥育されている褐毛和種のうち、熊本県が約70%を占めています。黒毛和種よりも早く大きく育ち、ヘルシーな赤身肉が特徴です。
褐毛和種の代表銘柄は以下のとおり。
- 土佐あかうし
- くまもとあか牛
牛肉本来の風味が強く、程よいサシで微かに感じる脂の甘みと、赤身の濃厚な味わいが両方楽しめます。
参考:農林水産省
褐毛和種については、以下の記事で詳しく解説しています。
→【2系統に分かれる】褐毛和種の歴史や特徴を徹底解説!おすすめのブランド和牛も紹介
国産牛の種類と特徴
「国産牛」と表記されることが多いですが、国産牛にも品種があります。ここでは以下の国産牛の品種を解説します。
- ホルスタイン種
- ジャージー牛
- 交雑種
ホルスタイン種
ホルスタイン種は、オランダ北部からドイツ西北部で飼育されていた最も古い牛の品種です。
白と黒の模様が特徴的な牛のことを指します。国内で牛乳を採取するために育てられる乳用牛は99%がホルスタインです。
乳用牛として飼育されているホルスタインですが、肉用牛としても流通しています。
赤身が多く脂が少ないため、あっさりとした味わいが特徴です。
ジャージー牛
ジャージー牛とは、イギリスとフランスの海峡に浮かぶチャネル諸島のジャージー島が原産の乳用牛です。国内では岡山県をはじめ、北海道や熊本で飼育されています。
岡山県の蒜山酪農農業協同組合が、ジャージー牛を食肉用として販売しています。
鉄分が多く色鮮やかでコクがあり、まろやかな旨味が特徴です。
交雑種
交雑種は異なる品種間の交配で生まれた国産牛です。
ホルスタイン種の母牛と黒毛和牛を人工授精させて生まれます。肉専用種の黒毛和種の血が入っているため、乳牛種より肉質が良いのが特徴。
和牛より価格は安く、国産牛より肉質が良いため、コスパの良い国産牛です。
和牛と国産牛の味の違いを解説!
和牛と国産牛の味の違いは、霜降り具合と肉質の柔らかさです。和牛と国産牛の味の特徴を以下にまとめました。
和牛 | 国産牛 |
・霜降りが多く脂の甘みを強く感じる ・非常に柔らかい肉質 ・高級部位は、とろけるような食感になる。 ・脂が多いため胃もたれしやすい。 | ・脂が少なめでさっぱり食べやすい。 ・程よく噛みごたえのある食感。 ・和牛に比べてカロリーが低くヘルシー。 |
高級感のある味わいを楽しむなら、和牛が良いでしょう。サーロインのとろけて消えるような食感や、うっすらとサシの入った上質な赤身は絶品です。
しかし和牛は脂が多く胃もたれしやすいため、量を食べられない人が多くなるでしょう。
程よく高級な食事を楽しみたい人に、おすすめしたい牛肉です。
一方国産牛は、肉の脂が苦手な人におすすめです。さっぱり食べやすくカロリーが低いため、サーロインやカルビといった脂の多い部位でも美味しく食べられます。
国産牛の赤身は和牛と比べると肉質が硬いので、人によっては噛み切れない可能性があります。
国産牛を食べるならサーロインやカルビといった、柔らかくて脂の多い部位がおすすめです。
柔らかい食感と脂の甘みを楽しむなら和牛、脂が苦手な方やさっぱり食べやすい肉が好みの場合は、国産牛を選びましょう。
また和牛や国産牛と一緒にお酒を楽しむなら、ワインが良いでしょう。ワインのタンニンと呼ばれる成分が肉の脂をさっぱりさせてくれるので、脂の強い牛肉との相性が非常に良いです。
肉と一緒にお酒を飲む際は、ぜひ一度試してみてください。
赤身を選ぶなら和牛と国産牛どちらがいいのか
消費者の健康志向の変化から人気となっている赤身肉。味で選ぶなら和牛、カロリーで選ぶなら国産牛を選びましょう。
和牛の赤身はうっすらとサシが入ります。赤身の旨味だけでなく、脂の甘みも感じられる上品な味わいが特徴です。
一方で国産牛の赤身は和牛に比べて脂が少ないため、カロリーを抑えられます。
以下のように和牛と国産牛では100gあたり50Kcalの差があります。
和牛赤身 | 100gあたり191kcal |
国産牛赤身 | 100gあたり140kcal |
参考:カロリーSlism
ダイエットやトレーニングを行っている人には、国産牛の赤身が最適です。
上品で贅沢な味わいを楽しむなら和牛、カロリーが気になる方は国産牛の赤身を選びましょう。
赤身の厚切りは硬くて噛み切れないという方もいるため、スライスや切落しなどの薄切りで食べるのがおすすめです。
おすすめの赤身は、以下の記事で詳しく解説しています。
→【極上の赤身ステーキ】精肉店で働く人がA5等級神戸牛ヒレステーキを徹底レビュー!
和牛と国産牛を購入する際に気をつけること
和牛と国産牛を購入する際は、個体識別番号が記載されているか必ず確認しましょう。
個体識別番号とは、牛トレーサビリティ法に基づき国内で飼育される牛に割り振られている10桁の番号のことです。
個体識別番号が割り振られている理由は以下のとおり。
- BSEや牛の重大な病気が発生したときに、迅速な対応が可能となるため
- O-157などの事件が発生した場合に、流通経路を明らかにすることが可能となるため
- 食品表示法で義務付けられている「原産地」表示の偽装防止にも役立つため
購入する際に特に気をつけてほしいのが「原産地の表示の偽装」です。
国内産で売ってあるにもかかわらず、個体識別番号が記載されていなければ、購入するのは避けましょう。
お店側が忘れている場合もありますが、証拠がないため、本当に国内産の牛肉かどうか判別できません。
個体識別番号が記載されている場合でも「調べてみると和牛ではなく国産牛だった」というケースもありえます。
銘柄和牛だと表記しているのに、ホルスタイン種などで売っている場合は、原産地の偽装です。
消費者を騙すような行為はあってはなりません。しかし度々偽装問題のニュースを見かけるので、ゼロにはなっていないのが現状です。
購入した牛肉が「銘柄和牛なのだろうか」「偽装されていないか不安だ」という方は、以下のサイトから個体識別番号を調べてみてください。
正しい表記の和牛と国産牛を購入するために、必ず個体識別番号が記載されている牛肉を選びましょう。
和牛と国産牛のまとめ
和牛と国産牛の種類や味の違いについて解説しました。今回の記事では、以下の内容を覚えておきましょう。
- 和牛として認められるのは4品種だけ
- 国産牛は国内で肥育された期間が最も長い牛
- 赤身は味で選ぶなら和牛、カロリーで選ぶなら国産牛
- 個体識別番号が記載されている商品を選ぶ
高級で上質な味わいの和牛は、贈り物や贅沢な食事におすすめです。肉の脂が苦手な人やカロリーを気にしている方は、脂が少なくさっぱり食べやすい国産牛を選びましょう。
赤身を選ぶなら、うっすらと霜降りが入る和牛がおすすめです。
サシが入っている見栄えの良い赤身は、贈答用にも利用できます。
この記事を読んでくださった方には「牛肉を買ったけど美味しくなかった」「脂が多くて食べれない」と、買ったあとに後悔してほしくありません。和牛と国産牛の違いを理解して、目的に合った牛肉を購入してください。
「国内産の牛肉にもいろんな種類があって、どれがいいのか分からない」そんな方のために、以下の記事では精肉店で働くわたしがおすすめするブランド和牛を紹介しています。
美味しい和牛を探している方は、ぜひ一度のぞいてみてください。